ボトムアップ型の組織と文化を活かした、Save Pointの導入ストーリー

ボトムアップ型の組織と文化を活かした、Save Pointの導入ストーリー

企画営業本部 開発グループ グループマネージャー 比留間 誠 様(左)
経営企画室 チーフ 飯嶋 瑞生 様(右)

ボトムアップ型の組織と文化を活かした、Save Pointの導入ストーリー

株式会社 壽屋

アニメやゲームなどのキャラクターや自社オリジナルのプラモデル、模型、フィギュア、グッズなどの企画・販売を行うホビー業界の老舗企業「壽屋」。そのフィギュア事業部にてSave Pointをご利用いただき、業務の効率化を実現されました。今回はSave Pointを組み込んだ新たな業務フローをどのようにして社内に定着させたのかを伺いました。

飯嶋:
私は経営企画室にて消費者ニーズの調査などのマーケティングやデータ活用、デジタル化による業務改革、デジタルコンテンツによる新規IP開発などを担当しています。Save Pointの社内導入は私と比留間が主導して行いました。

比留間:
私は開発グループにて製造、量産、パッケージング等、企画された製品が実際に製造されるまでのものづくり全般を担当しています。以前は飯嶋と同じ経営企画室に所属しており、デジタルツールを用いた業務改善の一環としてSave Pointの導入に携わっていました。




  • 課題
    • - 原型製作がデジタル化されたことで、途中工程が各自のローカル環境に孤立し、周囲から作業状況が見えなくなった
    • - ボトムアップ型の組織体質のため、新ツールの定着には現場の共感や理解が必須となる
    • - 部門毎に既存の業務環境や使用ツールが異なり、一律的な方法ではツールや新ワークフローの導入が難しい
  • 効果
    • - 工程全体やお互いの仕事が可視化されたことで、社内原型製作の業務効率や品質が向上した
    • - 製作現場のキーマンをおさえ、テスト運用と社内の口コミによるボトムアップ型の導入方法でツールの普及を促進した
    • - 各部門の既存の業務フローに寄り添い、起点となる担当者が自発的にツールを使うよう促すことで、ツールの定着をはかった

Save Pointの導入で、原型製作を約170時間(年間)も効率化。同時に工程の可視化によって、業務効率化や製作品質の向上に貢献

飯嶋:
2017年頃、弊社が株式を上場するタイミングで、経営企画のミッションとしてデジタルデータの利活用というテーマがあり、その一環でフィギュアの原型製作の工程を改めて見直すことになりました。フィギュアを作るにはまず原型師と呼ばれるクリエイターに製品の大本となる立体物を作っていただく必要があるのですが、私がそのミッションに取り組んだ頃はちょうどその工程がアナログからデジタルに移行した直後でした。以前は原型師が粘土やパテなどを捏ねて作っていた原型を、3DCGモデリングで製作するようになったのです。

比留間:
会社が着目していたのは原型製作にかかる時間です。ファンの皆様の期待に応え、会社として成長していくためには新しい製品企画の数を増やす必要があり、それは原型をどれだけ効率的に生み出せるかに左右されます。そのため、造形にかかる時間を可視化し、短縮することが会社から求められていました。

飯嶋:
上役からは製作がデジタル化されたことでキャラクターの部位ごとに担当者を割り振って製作を進め納期を圧縮できるのではないかという極端な提案もありました。他方、フィギュア製作は原型師が丹精込めて1体を仕上げることで生まれる魅力があり、また採用しているデジタル原型ソフトも分業が得意なものではありません。上役からのデジタルに対する期待と原型のデジタル化に伴う実態をすり合わせる中で、粘土造形の時代は「実際に製作物が社内テーブルの上にあって、製作途中の造形物をみんなで見ることで技術を吸収し合い、どの製作進度や状況を把握できていた。デジタル化されてからは自分の製作物しか見えず、学びの機会が得られない。スケジュールの全体を俯瞰できない。」という声が上がってきて、CGモデリングによる原型製作の工程可視化が、効率性からも品質面からも重要であると判断しました。

原型師の皆さんの業務データを取って分析してみたところ、打ち合わせやメールの確認、データのアップロードなど、造形以外の業務に費やす時間が想定を超えて多いことがわかりました。つまり、クリエイティブ以外の業務を合理化すれば造形に割り当てる時間を増やすことが可能となるため、明らかに原型製作の能率を改善できます。そこで以前に他のプロジェクトで使った、Save Pointの導入を社内会議で提案しました。

もちろんツールの導入にあたり、他サービスと比較検討しましたが、導入コストの安さに加え、インターフェースの単純さや、ブラウザ上で動作するためソフトウェアのインストールが要らないという利便性など、Save Pointが弊社の製作環境にマッチすると判断しました。Save Pointを用いたワークフローが実際に定着するまでに様々な苦労もありましたが、それについては後ほど比留間からお話しいただきます。

Save Pointでは様々なプロジェクトの進行状況が全て可視化されるため、現場に定着して以降、社内のクリエイターから「お互いの仕事が見えて、学びになる」「工程の進捗状況を俯瞰できる」とご好評をいただいております。それが実際の製品のクオリティアップにも貢献してか、業務改善以降の製品をご購入されたお客様からのアンケートでは満足度がはっきりと向上しています。それら全てがSave Pointの導入による効果というわけではありませんが、今回の業務工程の改善にSave Pointが不可欠だったことは確かです。そしてSave Pointの導入によって、実際に原型師たちの事務作業時間が大きく削減されました。もちろん細かい数字は言えませんのでおおよその数字となりますが、年間で約170時間を効率化し、それだけの時間を原型製作に費やすことができるようになりました。




  • 注)画像左: 比留間様
      画像右:飯嶋様

これまでの仕事の流れを否定せず、むしろどう寄り添うか

比留間:
飯嶋は会社の体制を良くしていくことにしっかりと目を向けていましたし、会社から造形の業務効率化というミッションを課された際も、非常に明確なプランを提案していました。一方で計画を実現するにあたり、企画をどう動かしていくのか、社内の人を巻き込んでどう浸透させていくのかという点については、一人ではなかなか骨が折れるんじゃないかな、とも思いました。当時は自分も同じ経営企画室にいたので、彼に協力することになりました。

Save Pointというサービスは飯嶋が見出したものでしたし、データ分析の結果を見ても「実際の製作現場でも効果を発揮するだろう」と確信を持っていました。ですが、単に新しいものを導入しようと提案しても、基本的に人は誰でも「今のやり方で間に合っています」という話になりがちです。業務フローは様々な人が関わって議論をした上で形成されたものなので、それも当然かもしれません。そのため導入する前段階で「今以上に改善できる余地があります、だからツールを導入したいんです。ツールには具体的にこのようなメリットがあります」という話を、各所に入念にしましたし、その前提として「もっと仕事を楽にしていこうよ」というスタンスは欠かさないようにしました。

また、私ども壽屋はボトムアップの色彩が強い会社です。おそらく弊社が小売店からスタートしており、実際に製品を作る現場の声にしっかりと耳を傾けた方がいいという考えを文化として持っているからだと思うのですが、現場の声を集めて経営層がそれをまとめるという流れで、物事が決まるケースが多くみられます。そのためツールの導入にあたっても、最初から「これを使いなさい」と頭ごなしに指示する形では、普及も定着も難しいと思いました。

そこで飯嶋と2人でやり方を考えた結果、やはりボトムアップの会社なのだから、現場に口コミで広げていく方法がいいだろうと考えました。実際、弊社のフィギュア造形がアナログからデジタルに移行した際も、トップダウンではなく現場から広がっていきました。社内のキーマンといえる原型師がデジタル原型に可能性を感じ、3DCGソフトウェアを勉強し、自分自身で試し、そこから社内に広めていったことで、弊社はデジタル造形に移行できました。それと同じように、数は多くなくともツール導入や効率化に賛同してくれる仲間を募って、彼らに草の根運動的に広めてもらう方法をとりました。最初は数名の仲間を集めて説明会を開いて、新しいワークフローの導入に参画してくれる仲間を一人ひとり増やしていきました。そして彼らが現場で「Save Pointって良いよ」と伝えてくれる口コミの効果が大きかったと思います。

飯嶋:
いきなり「このツールを導入します」みたいなことをやってしまうと、導入しても誰も使ってくれないだろうとは思いましたね。

比留間:
まずはフィギュアチームの企画担当や原型師、その管理職の方にご理解をいただき、3ヵ月のテスト運用を通して、Save Pointが実際に業務の効率化につながるのだという手ごたえをキーマンに実感していただきました。

飯嶋:
ツールの使い方やそれを織り込んだワークフローも、キーマン含め現場のみなさんで作り上げてもらうように意識しましたね。

比留間:
そうですね。今までのやり方を崩すために導入するのではなく、より効率化するために使ってもらう、というイメージです。

重ね重ねになりますが、現場ではこれまで苦労を重ねた結果として今の仕事の流れを築いているので、当然自負もあり、そこに直接メスを入れるのはよくないと思っていました。新しいツールはこれまでの仕事の流れを変えるのではなく、むしろ既存の流れにどう寄り添えるか?という観点で取り組むようにしました。




キーマンをよすがに現場との信頼関係を築き、自発的な口コミを現場から広げて普及を実現


比留間:
キーマンによる3ヵ月のテスト運用が終わった後、実際に現場でSave Pointを使うスタッフ向けの説明会を複数回開催したのですが、そこでの反応は想像通り、最初は冷ややかなものでした。

飯嶋:
造形部門に関しては、先述のデジタル造形への移行の際にお話したキーマンの原型師にご理解いただき、テスト運用にも参加してもらいました。そのため「彼が言うなら試してみるか」というモチベーションの方が多かったですね。一方で企画部門のスタッフは、社内外との連絡用に既に様々なツールを使っていたため、「これ以上ツールを増やさないでくれよ!」という声もありました。

比留間:
限られた時間の中で頑張って仕事をしてきたのにさらに新しいツールを増やすのか、という反応が無いわけではありませんでした。もちろん、そんな状況を改善し、みんな楽になるためだとお伝えしていたのですが、それでもやはり多少の抵抗感はあったと思います。

彼らを巻き込むためにマニュアルや運用ルールも作成したのですが、一番大事なことはプロジェクトがスタートする際に、誰かが自発的にSave Pointを使うことだと考えました。私たちが全方位的に頭ごなしに使うように言っても定着はしませんが、最初の誰かが当然のようにSave Pointを使えば、他の人も自然とSave Pointを使うようになるはずです。そのため、最初の頃は商品のプロジェクトが始まるたびに「これ(Save Point)にデータを入れましょう」と声をかけて啓蒙活動をしました。

飯嶋:
誰かが使うだろう、ではなく、起点となる特定の人に「あなたが使ってください」と伝えていきました。

比留間:
また、原型部門が企画部門から企画書などのデータを受け取る際にも「ここ(Save Point)にデータを入れてください」と言ってもらうようにしました。業務の流れを考慮して、どの部門から働きかけてもらうのが効果的かを考えた方が、私たちから直接使うように指示するよりはいいだろうと考えたのです。

最初はそういう声がけを繰り返していましたが、Save Pointに触れる人が増えてくると次第に「これはいいね」と手応えを感じる人も増えてきて、今度は彼らがSave Pointを広める側に回ってくれました。そういった協力者が現れたことでSave Pointの普及や定着が実現したと思いますが、そもそもSave Point自体がとても使いやすく、人を動かすポテンシャルを持っていたのだとも思います。


壽屋様の導入フロー

  • 画像:壽屋様の「Save Point」導入フロー


現在、フィギュア部門ではSave Pointを用いたワークフローに移行していますが、今後プラモデルや雑貨などを扱う他の部門でもSave Pointを使う動きが出てきています。そんな折に、たまたま社内で大きな組織編制があり、フィギュア部門でSave Pointを使っていた人が、僕も含めて様々な部門に配属されました。そこでSave Point利用経験者の多くが「これ、良いよ」と、新しい配属先でSave Point導入の手助けをしているようです。

飯嶋:
弊社では現在、フィギュア造形で培った3DCG技術を応用したVR用アバターの販売など、デジタル事業も展開しています。今後製品ジャンルが拡大するに伴ってSave Pointの利用も広がっていくかもしれません。これから様々なジャンルのクリエイターがより多くの時間を創造活動に充て、集中してものづくりができるよう、Save Pointの進化に期待しています。







壽屋







株式会社 壽屋


株式会社 壽屋

株式会社壽屋について
東京都立川市で玩具店として1953年1月に設立。時代と共にプラモデル・フィギュア・キャラクターグッズなどを取り扱うホビーメーカーへ姿を変え、2023年1月には創立70周年を迎える。
人気アニメ/ゲーム/映画キャラクター等のホビー関連品についてコンテンツ保有者からの使用許諾に係るライセンスを取得し、製品の企画立案、開発、デザイン業務、製造管理、販売、アフターサービスまでを一貫して行っており、近年は、積極的な海外展開でコトブキヤブランドのファンを世界中で獲得。自社IP(キャラクターなどの知的財産権)の創出にも注力し、さまざまな企業とアライアンスを組みながら活動の幅を広げている。
さらに、プラモデルやフィギュアで培った3D造形技術を活用し事業領域の拡大を目指している。






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